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第14話
けれど俺は、少し考えてから判子を押した。
「うわあ、やばい。写メ撮ろう。撮ってください」
婚姻届を持ったあっくんが、にこっと俺の方を向いて笑う。
「いや、俺携帯持ってないから」
「俺ので撮ってください。あと後部座席の荷物の中に和葉さんの携帯もありますから」
用意周到で。
でも俺は判子を押した。
もしかしたら本当に臓器を売られてしまうかもしれないがその場合は逃げれたら逃げようと思う。
なによりも、この竜宮家の御子息が俺をいつまでも好きで居るはずが無い。
きっと引きこもってばかりで面白くなくてうじうじして、怠け者の俺を見て、盛り上がっている気持ちなんてすぐ冷めると思うんだ。
だから、俺の本当の気持ちは、『どうでもいい』だ。
どうでもいい。小説を書くのが邪魔されない環境なら問題ない。
「やばい。俺と和葉さんの名前が並んでる。ああ、素敵だ」
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