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第30話
「え、なんで最終章ってわかったの。その没さえなければ今頃脱稿だったのに」
「許せませんね。その出版社買収してやりたくなりますっ」
「あはは。お前がいくら竜宮家のご嫡男でももう公務員だろ。公務員が副職なんてしたらだめなんだぞ」
「え、和葉さん……」
「仕上げてくる」
俺の返事も聞かないうちに、和葉さんは行ってしまった。
いやあ、あれは天岩戸のごとく家から出てこない和葉さんを扉まで出てきてもらうための方便というか。
……単に和葉さんの喜ぶ警察の格好をしただけなんだけど。
「……大学卒業後に本当に警察になれば嘘じゃないか」
和葉さんならきっと、俺が今大学生だってことにも気づいていないと思う。
というか、俺を子ども扱いしたままだったらどうしよう。
人並み以上に性欲あるし、10年分いちゃいちゃしたい気持ちを背伸びして我慢しているんですが、どうしたら伝わるのかな。
そして、未だに居間に置かれたままの俺からのプレゼントの山。
いつ見てくれるだろうか。
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