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第33話

Side:乙宮 和葉 最後の『了』という字を、思いっきりキーボードを叩いて入力し、満足げに俺は顔を上げた。 脱稿だ。 エロを車から、家のベランダに変えたのだけは納得できない。 現実であったらくそ萌えるけど、非現実。 そんな内容がエロいのに何もわかってない。 「ああ……臭くないかな」 三日ぶりの風呂に向かうが、部屋の襖を触ろうとして立ち止まる。 すげえいいにおいがする。お味噌汁と卵焼きと魚、そしてほうれん草の和え物。 この匂いはそんな感じだ。もしかして辰崎さんがあの執事服で作ってるのかもしれない。 今度の新作のプロットは、お嬢様といけない執事。 20歳の成人したばかりのお嬢様に、48歳の渋い執事が縛られ玩具を咥えさせられ、首輪をつけて屋敷中を四つん這いになって散歩させられる。 ああ。大人の男性が、若い女に舐められて、けれど快楽には抗えない。 最高だ。 うっとりしながら、襖の向こうの辰崎さんに思いを馳せ、開ける。 「あ、ダーリン。お疲れ様です」

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