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第46話
あっくんは俺の髪をくるくる指先でいじりながら、かしこまった様子で言った。
「しゃ、写真を撮りたいのです。結婚式とか和葉さんはしたくないかもだろうから」
「呼ぶ人がいないからなあ……」
「この屋敷内で、着物に着替えてカメラマン呼んで、結婚記念に撮影会したいです。池の周りや、縁側、あとご飯食べてる様子とか」
「……いいぞ」
本当に結婚式の撮影なのか、まだ半信半疑だ。
もしかしたら、その写真は俺の臓器移植オークションに使われるんじゃないか。
まだ、この年下のあっくんがくれる幸せな日常が俺には信じられない。
夢の中にいるみたいだ。
「やった。ではおばあ様が和葉さん用に仕立てた着物があるので、着ていただけますか? 真っ赤な生地に大輪のバラの花が描かれてる、世界に一点ものなんです」
「着物!? おれが!?」
「俺が着てもいいのですが、俺は和葉さんの好きな警官の正装で撮ろうかと思ってたんで」
「警官がいい!」
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