46 / 268

第46話

あっくんは俺の髪をくるくる指先でいじりながら、かしこまった様子で言った。 「しゃ、写真を撮りたいのです。結婚式とか和葉さんはしたくないかもだろうから」 「呼ぶ人がいないからなあ……」 「この屋敷内で、着物に着替えてカメラマン呼んで、結婚記念に撮影会したいです。池の周りや、縁側、あとご飯食べてる様子とか」 「……いいぞ」 本当に結婚式の撮影なのか、まだ半信半疑だ。 もしかしたら、その写真は俺の臓器移植オークションに使われるんじゃないか。 まだ、この年下のあっくんがくれる幸せな日常が俺には信じられない。 夢の中にいるみたいだ。 「やった。ではおばあ様が和葉さん用に仕立てた着物があるので、着ていただけますか? 真っ赤な生地に大輪のバラの花が描かれてる、世界に一点ものなんです」 「着物!? おれが!?」 「俺が着てもいいのですが、俺は和葉さんの好きな警官の正装で撮ろうかと思ってたんで」 「警官がいい!」

ともだちにシェアしよう!