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第56話

家に訪問してきたんだから、交番かな? というか、交通課? 刑事? 〇棒? 公務員だし転勤だってるのにこんな豪邸建てて大丈夫なのか? 俺はパソコンと闇に染まりし閉所さえあれば仕事できるから着いていくけれども。 「和葉さん、すいません。もういってきます」 辰崎さんの声が消え、代わりに慌ただしく走ってくる足音に、俺は壁に押し付けていた耳を離し廊下へ飛び出す。 「うん。いってらっしゃい」 「ごめんね。いってきますのちゅーは、舌入れたら流石に今日は怒られそうなんで」 代わりに子供みたいな可愛らしいキスをされる。 「そういやさっき講義って言ってたけど、研修か何かだから私服なのか?」 「え、あはは。やだなあ。警察だからって制服で通勤するわけじゃないですよ。むこうで着替えるんです。それに講義じゃなくて会議ですよ」 「そう……なのか」 会議に遅刻って、そんな爽やかに笑ってられる余裕があることなのか。 もう少し急ぐべきだと思うけど。 「まあ、気をつけてな。遅くなる?」 「いいえ。定時です」 きっぱり断ったあっくんは、慌ただしくまた玄関へ向かう。  俺はお見送りについていくと、辰崎さんが紙袋を持って立っていた。 「先ほどは、お見苦しい姿をお見せしてすいません」 「いえ、ほんと、俺が悪いので切腹はやめてくださいね」 「取り乱しまして情けないです。こちら、昭親様に頼まれていた本ですが、どうぞ和葉様もお勉強されてください」 「あ、ありがとうございます」 渡された紙袋の中には、たくさんの料理本。 『内臓脂肪のつかないオカズ200』『内臓に良い食べ物』 これって……。

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