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第64話
「……お前、けっこう俺のこと嫌いだよな」
「でも、お兄さんにはお世話になってるし親同士は仲いいし、仕方ないじゃん」
「否定しろ。否定を」
とは言いつつも、俺の隣を陣取って離れない。
結構、恵には本性を隠さず接しているんだけど、めげない。
これぐらい裏表がないほうが、将来仕事をする上ではやりやすいのかもしれない。
「お前さあ、いい加減、そのパートナーさんを紹介しろよ」
「いやだよ」
「12歳年上で、家柄も財力もほぼ0で、利用価値もないのに愛してるんだろ? 超美人で超床上手ってことだろ」
「君さ、今日中に苦しんで死ねばいいのに」
「幼馴染にそんな爽やかな顔できついこと言うなよ」
俺が結構本気で怒ってるのに気づいたのか、慌てだしたがもう遅い。
愛を前にそのような下品な発想をするやつは幼馴染でもなんでもない。
「もういいから、視界に入らないで」
突き放すと、慣れたものでいつも通り携帯を弄りだした。
能力は高いし頭は切れるから評価できる部分はあるが、友人にはしたくないタイプだ。
「……ああ」
早く和葉さんに会いたい。
充血していた目は、ちゃんと休んで潤っているといいし。
冷房がガンガン効いた真っ暗な部屋にいたせいで乾燥した唇も、俺が潤わせてあげたい。
今日はもう起きないとか言ってたから、すごく疲れてたんだろうし、会いたいけど我慢。
長く寝かせてあげよう。
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