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第67話

疲れた。 香里さんには結婚していることを伝えた。 俺は自分の生きていく世界や、横のつながりを軽視するつもりはないし、ちゃんと上手くやっていけるように努力はする。 仕事はちゃんとこなしていく。 お金があれば、和葉さんを苦労させないし。 和葉さんのために使えるし。 あとはもう子ども扱いされず、一人の男として彼を支えられる男性になって認めてもらえたらいい。 辰崎さんの車から降りて、少しだけ自分で歩いて帰った。 それには狙いがあって、願はくは、和葉さんにおかえりなさいのキスとかハグとか俺にだけに向けられる微笑みとかほしかったから。 なのに。 「ただいま」 玄関のドアを開けると、屋敷は真っ暗で静まり返っていた。 「……和葉さん?」 返事がない。キッチンや台所、プレゼントを押し込んだ客間にもいない。 自室かな。 「和葉さん。帰りましたよ。お昼ご飯は」

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