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第69話
俺の服を抱きしめて眠るなんて。
布団にはいかないのに、俺のエプロンは抱きしめるなんて。
愛おしい。可愛い。だめだ。
好きすぎてくらくら眩暈がする。
俺の気持ちを感じてほしい。奥へ、奥へ、注ぐから俺の気持ちが和葉さんの心の一番奥までしみ込んでほしい。
限界だった。抱きしめたら、電流が流れるような甘い疼きが背中に走って、この人を抱きたくて止まらなくなった。
「えーと、でも」
「なんですか?」
「……抱いたら、手放すときに辛くなるんじゃねえかなと」
手放す?
誰が誰を? どうして、どのように?
「……それに、俺、今はダメだ」
抱きしめた腕の中で、ふるふると頭を振ると、腕から逃れようともがく。
「何でですか。今朝、もう体の隅々まで見たでしょう? なんで、ダメなんですか」
「ごめ、離して、ちょっと時間を、5分、いや1分でいいから、時間を」
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