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第71話
初夜に向けて準備って何? 直腸を拡張してるってこと?
え?
流石官能小説家。事前準備とか詳しいに決まっている。
そういえば今朝読ませてもらった本には、警備員がバイブ二本突っ込まれたまま会社の見回りさせられていた。
二本突っ込む前に馴染ませて、ちゃんと拡張していたっけ。
つまり和葉さんは知識がある。
もしかするとあの浴衣の下は既に……。
「あの、準備って例えば?」
子どもだ。俺は今子どもだ。だから聞く。聞かせてもらう。
するとためらった和葉さんは胸元をがばっとあける。
上半身に準備?
「一分時間をくれたら隠したのに」
胸元の可愛い乳首の奥に、何か布が見えた。
えっとこれって。
「腹巻だ」
「ハラマキ……」
本当だ。肌色の腹巻だ。
「空調がちょっと寒かったから、内臓を冷やすわけにもいかないだろうしなって」
「すみません。和葉さんの衣装部屋を説明していませんでした。隣の部屋の箪笥の中はすべて和葉さん用の服が収納されてたんです」
「馬鹿!」
ばか?
「お前は慣れてるかもしれない。花屋みたいに大事にして、出荷するだけだから怖くはないんだろ。でも俺は、本当に出荷されるのか、どうなるのか信じていいのか不安で、馬鹿」
胸元を抑えて、涙を目に溜めた和葉さんが横を向く。
「すぐ終わるだろ。こんな俺との時間も……」
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