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第73話
「和葉さん、俺、泣いてる貴方を放っておけません」
「……俺だってわからねえよ。覚悟してたのになんで泣いてるのか、自分でもわからねえんだって」
分からないで涙が込み上げてくる?
覚悟って、……俺と結婚すること?
結婚を思い詰めているって、それって朝、辰崎さんが言っていたマリッジブルーのことじゃないのか。
やはり和葉さん、マリッジブルーだったのか。
「……俺が和葉さんを色々追い詰めていたんですね」
「気にすんな。違うから」
「だったらなんで泣くんですか」
和葉さんは数秒下を向いた後、襖を徐に開けて俺の方を見る。
「夫婦っていうなら、ルールを作ろう。俺からの提案は、初夜まで寝床は別々だ」
「和葉さん?」
「お前は? 好きに決めて。風呂が一緒の方が贈呈品だから綺麗にできるだろ? そうする?」
なんか、穏やかなのに目が座ってるっていうか、なんだろう。
何か、俺、和葉さんが怒ることを言ってしまったのか。
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