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第84話

Side:竜宮 昭親 「……疲れた」 空はどっぷりと夜に染まり、申し訳ない程度の細い月が顔を出している。 辰崎さんが迎えに来れないというので、竜宮家の車に送迎してもらい家に到着した。 初めて競りに参加した。見学ならば今まで父に連れていかれたので何度も行ったが、今回は世界中の海運コミュニティの第一人者ばかりだった。竜宮家のように貿易で富を得るものや、無人島を開拓してリゾート地へと栄えさせる者、豪華客船、真珠の栽培、養殖、造船など。そんな奴らが欲しがったある大きなものを、競り落とした。俺の貯金の半分が消えたが、痛手ではない。 和葉さんに贈ったら、きっと喜んでもらえると思う。 「ただいま帰りました」 今日はお出迎えしてくれるかな、と期待したけどよく見れば縁側の部屋に明かりがついていた。 靴も辰崎のものがある。辰崎なら信頼できるので、マリッジブルーの和葉さんを見張ってもらっていたけど、こんな時間まで二人っきりというのも妬ける。 が、子供みたいな豪快な足音とともに和葉さんの笑い声が聞こえた。 「よめー! 帰るのがおそいぞー」 「え、あ、すいません」 「お仕置きするから、こっち来なさい」

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