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第85話

訳も分からず、手を引っ張られ、靴も放り投げたまま玄関を上がる。 するとほのかに和葉さんからアルコールの匂いがした。 「和葉さん? あの、辰崎さんは?」 「辰崎さんは、お庭。お星さま取ってくるまで帰ってきたらダメ―って言ったの。ふふふ」 ふふふ? 「酔ってます?」 「あのな、酒に飲まれるか? 俺は今年30歳だぞ」 目が据わっているので間違いなく酔っているが認めようとはしない。 そのまま居間に到着すると、和葉さんは太ももまで浴衣をたくし上げると正座した。 「俺の目の間で正座しなさい」 「は、はい」 大人しく正面に正座して座った。すると、和葉さんの両手が伸びて、俺の顔が和葉さんの太ももの間に押し付けられる。 「ぎゃははは。圧迫死っ あっくんが俺の太ももに挟まれて、圧迫死―!」 ゲラゲラと完全に酔っぱらった和葉さんが、笑いながら俺の頭を太ももに押し付けてくる。 お仕置きじゃない。これはご褒美だ。 和葉さんの太ももに殺されてしまう。幸せだ。

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