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第87話
「なんでって、法律です」
「お前、金持ちだろ。今すぐその法律撤廃してこーい」
「できませんよ」
苦笑すると、30歳の酔っ払いは可愛らしく口を尖らせる。
「分かった。勿体ないから辰崎さんに飲ませるよ。たーつざー」
「わーわー!」
すぐに口に手を当てて抑えた。今の状況を見たら、辰崎さんに泣かれ、父に報告され、竜宮家で同居とか、最悪な未来しかない。
二十歳までは辰崎さんの監視があるのに、あの人は古風な貞操観念だから、こんなわかめ酒見たらどうなるか一目瞭然だ。
「おい、こら、紫のランドセルで小学生のコスプレしろよ」
「……股間部分にお酒溜めながら、なんで無茶ぶりばっかしてくるんですか。嫌です」
水でも飲ませようと、席を立つ。
とりあえずわかめ酒をしている間はうろうろしないだろうから、まだ助かる。
「あ、そうそう、下着、冷蔵庫に入れておいた」
「……はい」
酔っ払いの考えることは全く分からない。なぜ脱いだ下着を冷蔵庫に入れる必要があるんだ。
俺の反応に、また爆笑している。
「ねーねー、あっくん。今さ、M字開脚したら、面白くない? やっていいかな」
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