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第94話

「今は俺の指に集中してください」  奥へ水音を立ててかき混ぜていく。  唇を舐めると、中が締め付けられた。  白い和葉さんの肌が、うっすら汗ばんで桃色に染まっていく。 「……和葉さん、俺ね、凄い好きなんです。本当に和葉さんを目の前にすると、胸が苦しくて、大好きなんですよ」  肩を甘噛みすると、太ももを揺らす。刺激が足りないのか足をもじもじししている。 酔っぱらってる和葉さんにそんなことを言っても伝わらないのかもしれないけど、俺には毎日言っても10年分の好きはまだ伝えられていない。 「俺も……」  和葉さんが何かを言いかけた後、俺の肩を掴んでいた手を離し、畳に爪を立てる。 「俺もお前が可愛いと、思ってるよ」  嬉しい言葉のはずなのに、一瞬悲しそうに眉を歪ませたのはなんでだろうか。 「あっくん」 和葉さんが指を動かすのをやめた俺を見上げる。 瞳には映ってるのに、どうしてか遠い。 「はやくシなきゃ、辰崎さん来るぞ」

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