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第99話

― 「よし。和葉さん、用意できましたよ」  ぱりっと着こなした俺は、なりきるように背筋を伸ばし和葉さんの寝室へ向かう。 聴診器で胸を弄れる幸せの前に怖いものなどなかった。 「用意はできたかね、和葉看護士!」 「おかえりなさいませ、昭親さま」 スッパーンっと良い音とともに登場した俺の目の前で虫かごと虫取り網を持った辰崎さんが正座してワイングラスを揺らしていた。 「あ……ただいま。あの、和葉さんは?」 「和葉看護士さまでしたら、そこで倒れるように眠っておりましたので、布団を敷いてそちらの部屋に寝かせています。寝室には入らないで欲しいと言われておりましたので」 「そ、そっかあ」 「お部屋でそんな白いコートなど暑いでしょ。お脱ぎになられては?」 淡々という辰崎の魂胆が分からず、爽やかに笑いながら白衣を脱いだ。 呆れたり怒ってくれた方がまだ恥ずかしくないのに、無反応というのも困る。 「そういえば、星を捕まえて来いって和葉さんに言われたんじゃ?」

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