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第100話
「はい。なので蛍を数匹頂いてきました。庭に放そうと思っています」
「へ、へえ……」
じゃあ、とっとと帰ってくれと内心で思ったけど、ひきつった笑顔で誤魔化す。
「ちなみに、昭親様」
「はい」
「あれが、お酒に飲まれた悪い飲み方です。体験したほうがいいと思いまして」
「うん。体験して分かったよ。酒に飲まれたらいけないね。理性は残さないと」
なぜか正座になってしまった俺は、ワインを飲む辰崎さんの顔色を窺ってしまった。
「そして、お酒で酔ったお相手を騙して、あんなことやこんなことをなさるような、紳士ではない振る舞いにもお気をつけくださいね」
思わず、変な声が出そうになった。
どこまで知ってるんだ。どこからか見てたのか。
だって酔って俺を散々煽ったのは、和葉さんだし。
「不安をずっと隠してきたのでしょう。こんな風に発散しないと伝えられないとは、和葉さんもお可哀想に」
「――え?」
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