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第102話

見逃していた声を聞こう。和葉さんはかなりネガティブな思考の持ち主で、一回悪い方向に考えたら、絶対に訂正しない。 と、和葉さんの編集担当がそんな情報を言っていた気がする。 きっと何か引っかかっているんだ。 俺が放った一言。 「おい、あっくん」 強い口調は、いつもの穏やかでのんびりした和葉さんとはかけ離れているけど、わがままを言えない和葉さんよりはきっとましだ。 「下半身は温めたタオルで拭きますし、お水はここです。それと星は辰崎さんが用意しました。――他には何かありますか?」  優しく、穏やかに言ってみたのに、なぜかすごく睨まれてしまった。 「何でもいいのか?」 「いいですよ」 「お前は俺の嫁だ。誓うか?」 「もちろんです」  当たり前ですと言わんばかりに首を傾げると、和葉さんは眼に涙を溜めだした。 指以外なら、和葉さんのために何でもする。 「じゃあ、離すな。手放すなよ、ばか」  服の裾を掴まれ、引き寄せられた。 「離れたら、指入れてやる」 それは、一緒に寝ようってこと? 「離れません。絶対に離れません。ちょっと待っててくださいね」

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