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第109話

「少しは自分で思い出したらいいんじゃないですか?」 ……拗ねてる。いっつも優しく甘やかしてくれるあっくんじゃない。 とても拗ねて頑なに俺の方を見ようとしない。 「……ごめん。分かった」  いつも尻尾振っている犬みたいなあっくんに甘えていた。酔った俺が悪いんだから、あっくんに無理に聞くのはいけない。 でもいつもみたいに、おはようって笑ってくれていたあっくんが冷たいと凹むなあ。 自分勝手だけど。 「……」 項垂れたまま頭痛を隠して起き上がろうとしたら、腕を掴まれた。 「ごめんなさい。子どもみたいに拗ねてしまった」 「あっくん?」 「頭痛いでしょ。薬取ってくるので、寝ててください」 「いや、いいよ。俺が悪いんだから、自分のことは自分でする」 喧嘩ではないんだけどなんだろう。ちょっと異様な空気だ。 「俺はいつでも和葉さんのためなら何でもしたいんですっ。ただ、昨日、自分が子供であまりにも和葉さんのことを分かってなくて、一人で落ち込んでるだけなんです」 「酔った俺に怒ってたんじゃないの?」 「可愛すぎで怒ってますよ、もちろん」

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