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第113話

「え?」 「ルールですよ。この前決めようって話してたじゃないですか。あれ、付け加えますよ。お酒は記憶を飛ばすまで飲まない、もしくは――俺がいる時しか飲まないってね」  これだけは譲れませんからね、とあっくんが鼻息荒くまくしたてる。 それほど俺の酒の飲み方はダメだったのかと、反省するが――。 なぜか俺はその言葉を聞いて、気づけば涙を流していた。 「和葉さん!?」 「や、俺、二日酔いで思考回路おかしい」  あっくんの口ぶりが、まるでずっとこの生活を続けようって言ってるみたいだった。 そんなはずないのに。 この結婚は、臓器販売やら海外密輸やら色々竜宮家の怪しい闇取引の中に埋め込まれた作戦に過ぎない。 俺みたいに引きこもりで、10年以上誰にも会わないように生きてきた人間が消えたら、きっり誰も探さないから都合が良かったんだ。 「今の発言何か貴方を傷つけましたか?」 「違うんだ」 「――違うなら、ちゃんと教えてください」

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