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第114話

枕の下に隠れようとしたら枕を奪われ、遠くに放られた。 「二日酔い中の和葉さんを追い込むのは反則かもしれないけど、俺だってもう限界なんです。あなたが何を不安に思っているのか教えてください」 顔を覗き込まれ、喉がひゅっと鳴った。 逃げられない。なぜか、瞬時にそう思うとともに諦めてしまった。 こんなに真っすぐ見つめられ、悲しそうに眉を下げている年下の愛しい嫁を見て、逃げられるわけない。 「俺、高卒だし10年以上引きこもりだし、ネガティブで悪いほうにしか考えられないし」 「そうみたいですね。でもちょうどいいじゃないですか。俺はいい方向にしか考えません」 きっぱり言われる。その潔さに思わず拍手しそうになった。 「10年以上待ったんですから、今更その10年より苦しい時期はないんです。俺には」 10年以上……。 「そんなの、まだお前の年齢は人生の折り返しにも来てないぞ」

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