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第120話
鼻息荒くそこを否定されてもなあ。
どうしていいのかわからず、困ってしまう。
「えっと、あっくん。俺な」
「はい」
この体制のまま話すのは申し訳なかったので、上体を起こそうとしたがあっくんは首を振る。
寝てていいと、二日酔いを気遣ってくれている。
「俺、半信半疑っていうか、どうせすぐ終わるだろうしバツイチでも困ることもないし、って勢いで結婚したというか、しちゃったというか」
「そこは気にしないでください。俺がごり押ししました。俺のせいですよ」
「だから、今もこんな屋敷に連れてこられて、その……臓器販売だと疑わないと自我が保てないというか、夢から覚めた時、――辛くなるから」
しどろもどろに言い訳を並べてみても、結局は俺が現実を見たくなくて、自分だけ傷つきたくなくて逃げていただけ。
あっくんと向き合おうとしなかっただけだって気づかされる。
「あっくん」
手を伸ばす。伸ばす先は、泣き出しそうな震えた瞳。
寝たままでは届かなくて、頬に手を伸ばせば頬ずりされた。
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