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第122話

あっくんも畳に寝転ぶ。俺の布団には入ってこないが、布団の横で俺の髪を弄りだした。 「俺ね、中学時代だったかな。和葉さんが官能小説書いてるって聞いて、作家なんだって興奮したんですよ」 「興奮?」 「作家って言えば和装に和室ってイメージでしょ。和葉さんなら、毎日着物似合うじゃないですか。この家で着物でうろうろする和葉さんが見たくて建てたと言っても過言ではありません」  俺はそんな形から入る作家ではないし、そもそも官能小説家がそんなコスプレみたいな格好してもおかしいだろ。 「俺は40歳の和葉さんが着物を着てこの家で、俺を待ってくれてるビジョンはできてます。40歳の和葉さんがどれだけ色っぽいか説明しましょうか?」 説明はいらないが、あっくんがどこまでも男のセンスが悪いのは分かった。 でも俺もきっと、あっくんの要望に応えて着物ばかり着るようになるんだろうな。 そんな未来を想像したら、俺はほろほろとまた涙をこぼしていた。 すぐ逃げ出して傷つかないようにしてた。 そのせいで、あっくんのこのまっすぐな気持ちを平気で傷つけてしまっていたことを。

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