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第123話
自分の臆病さに涙が出たのに、あっくんはその涙を指先で優しく掬ってくれた。
「ごめんなさい。俺に売られるって思って怖い思いさせました」
「いや、違うんだ。幸せすぎて、そんな展開を考えるしか現実から逃げられなくて、その……」
どうしたらいいか、それは本当はもう俺は分かっているんだと思う。
覚悟を決めた。昨日、お風呂は入ったし、大丈夫だろう。
布団をめくって、少し横にずれてあっくんのスペースを作った。
「……おいで」
「え」
「頭痛くてうまく動けないけど、その――あっくんの気持ちを疑ったお詫びに」
「行きます」
頬をつねりながら、布団にあっくんが入ってきた。
途端に、沈んだ布団や温かいあっくんの体温に胸が熱くなる。
嫌なら、とっくに俺だって逃げてるはずだもんな。
「夢じゃないのか、抱きしめてくれますか?」
枕を半分こしていたので、少し頭が揺れて頭の中が除夜の鐘のように声を響かせる。
けれど今は、そんなことどうでもいい。
この年下の嫁を、どうしても抱きしめたい。
抱きしめたいのに、胸に飛び込んでぎゅっと抱き着く。
「夢じゃないよ」
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