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第139話
突如大声が聞こえてきて、俺は立ち止まる。
けれどあっくんは慣れているのか慌てていない。
横に避けてくれたので、止まったその場所から『町田』さまがよく見えた。
「……いい。この構図、いい。ああ、艶めかしいよ、お手玉ちゃん」
縁側に面した部屋の戸を開け、畳の上に無数のお手玉を転がしている中に、忍者の服を着たわかめみたいなもじゃもじゃした髪の男が寝転んでいた。
荒い息使いとともに、お手玉を写真に収めている。
目はわかめみたいな髪に隠れているけど、きっと普通の髪形にしてたらイケメンなんだろうなって雰囲気の変態だ。
「彼は、美しい風景や構図に欲情する変態ですが売れる前、竜宮家の専属カメラマンをしてくださってました」
「専属カメラマンっ」
「学校行事、一族が集まる行事、あとは本家の庭に欲情していたのでそちらを趣味で撮ってました」
「ふうん」
俺もおじさんにバイブ突っ込みたい性癖を持っているエロ小説家なので、とくに思うことはない。
けど人物ではなく構図や風景に欲情する人が撮って大丈夫なのかな。
「ああ。この真新しい畳の匂い、色とりどりのお手玉、いい。俺は今、この部屋の中に隠れた忍者だ」
だから忍者の服を着ているんだ。
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