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第141話
あ……。着物か。
良かった。確かにこの着物は俺も、女物とはいえ着るのにドキドキするほど高そうだから分かる。
「OK。あの失礼な変態を東京湾、いや足がつかないようにオホーツク海へ沈めてきますね」
「やめてっ海運王の権力駆使して葬るのは止めてあげてっ」
笑顔なんだけど、あっくんが怒っているのをビンビン受信してしまう。
やめてあげて。本当にやりかねない。
「冗談ですよ。でも本当に闇の権力持ってたら今すぐ臓器売ってやりたいぐらいですね」
「……え、やっぱり臓器販売してるの?」
俺、今日出荷?
青ざめた俺に、あっくんがハッとして縋りつく。
「違いますよ。今のは言葉のあやというか、最大限の怒りを表したかったのに、語彙のポケットが俺には全くなくて、違いますからね。俺はこんな綺麗で可愛くて美しい和葉さんの前で着物しか褒めない町田さんが許せなくて」
キスしそうなほどギリギリまで顔を近づけて必死なあっくんを見て、思わず笑ってしまう。
「全然気にしてないよ。それに、俺あまり……人とかかわるの好きじゃないから。あっくんにだけ褒められてたらそれでいいよ」
「……和葉さん、好き」
脈絡もなく抱きしめられたけど、警察官の制服で抱きしめられるのはかなり、興奮する。
俺も当然、抱きしめ返す。
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