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第156話

その時、池の鯉が跳ねたような気がしたんだ。 ぴちょんと、跳ねて飛び散った水飛沫が、いくつもの波紋を作って水面を震わせる。 そんな風に、俺の心も震えているのが分かった。 何度も何度も、あっくんの言動が俺の心に波紋のように広がっていく。 縁側から見える川が、一瞬で沸騰しそうなほど甘い言葉が降り注ぐんだ。 「どうしたの、お嫁さん」 町田さんが、俺とあっくんを見てよろめいている。 今は、俺の衣装の方が嫁だから俺のことだと思う。 前髪を自分で持ち上げて俺の顔をじろじろ見る。 「……いいね。今の君なら美しく撮れそうだ」 「当然です。和葉さんは息を吸うだけでも美しいのです」 と言いつつもあっくんも何か思うことがあるのか言いながら真っ赤になっていた。 「いいよ。早く撮って」 ビー玉が転がった縁側に座って、足を崩す。 ビー玉は、太陽に照らされ自分たちの長い影に色を付けていく。 そのキラキラ輝くビー玉を見ながら、静かに撮影会が始まった。

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