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第159話

「色気が足りないいいいいいいいいっ」 縁側で地団駄を踏みだした町田さんが、急に取りつかれたように無言で立ち上がると廊下の隅の小道具を漁りだした。 「これじゃない、これでもない、これは違う」 ぶつぶつと言いながら中を漁りだすので思わす驚いてあっくんを見る。 「どうしよう。あな〇ビーズ取り出して『これ挿入したまま写真撮れ』とか言われたら」 「官能小説の見すぎですよ」 「最初は俺の細い親指って決めてるのに」 「俺が挿入されるんですか? ってか和葉さん、俺に親指って容赦ないな!」 色々一気に驚いているあっくんの声を遮り、町田さんが『あったぞー』っと手に何か持ってやってきた。 「鏡に向かってこれを塗る姿を撮るよ」 「これって、朱肉?」 「艶紅って言ってまあ、和風な口紅、見ただけで昇天しそうな艶だろ。この細い筆で縫ってみて」 貝殻に漆を塗り、金粉で模様を描いている小さな口紅。開けると、紅赤色の口紅が入っている。 用意してあった鏡の前まで促され、自分で唇に塗ってみる。 それを連射して撮ってくるので困った。

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