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第161話
俺の頬に置かれたあっくんの長い指が、耳をかすめる。何度も触った後、わざと穴をぐるんと弄った。
「――っ」
「動かないで。はみ出しちゃうでしょ」
まるで焦らすような、甘くて微かな愛撫。
声を我慢したいけど動けなくて、じわりと涙が浮かぶ。
あっくんは意地悪だ。でも俺の口紅を塗りながら――あっくんも興奮してるんだと思う。
真剣な目。けれど今すぐ襲われそうなどう猛さも隠しているのが分かる。
なぞられる口紅。
濃くしたら、キスしてあっくんに俺の痕をつけてやる。
身体に電気が通るようなピリピリした中、甘く疼く。
そんな唇だけに愛撫しないでと、身体が震えている。
あっくんと俺は見つめ合いながら、口紅を塗る。
ただそれだけの行為なのに、時が止まったように長くて、そして焦らされ甘く苦しい。
「最の高だね。この口紅、超エロい」
今だけは、町田さんの無機質ラブに感謝だ。
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