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第166話

あっくんの反応に、俺は飛び上がる。 「も、もしかしてもう知ってる? 竜宮家ってそんな俺が誰にも言っていなかった秘密とかも調べられるの?」 「いえ。全力で調べ上げたのですが、いつか……いつか和葉さんが言いたくなったら、と、待ってたんです」 あっくんが俺の手を掴むと、恋人のように指を絡めてきた。 いや、恋人じゃない。夫婦だった。 「あのさ、おれにとっては結構人生が変わる出来事なんだけど、笑わないって約束してくれるか?」 「もちろんです」 「俺がこんな官能小説書くようになった原因というか、八端なんだけど」 「……無理やり手籠めにされたんですか!?」 あっくんが顔を真っ青にするので、俺は首を振る。 そして乱れた浴衣を直しながら、あっくんの胸に飛び込んだ。 「すごく地味な女性の先生がいたんだ。いっつも上は白のブラウスに下は黒のパンツ。牛乳瓶の底みたいな厚底眼鏡で、俺たち男子とはろく会話もしないし授業も女子しか指名しない変な先生」 「ふむ。確かそんな先生、調べた時にいました」 やっぱ調べてるじゃねえか。 「でも、その先生がある日、俺だけにちっせえ嫌がらせをするようになって、……その、セクハラじみたことをしだして」 「くっ! 急用を思い出しました。ちょっと竜宮家の忍者に指令を」 「忍者なんて居ないだろ! 最後まで真面目に聞け」

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