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第192話

「……新婚旅行の話、俺、何も聞いてないけど?」 「えーっと、言おうとした日に和葉さんが大変酔っていて。そういえばあの時、マリッジブルーでしたよね」 「はあ!? 俺がマリッジブルー!?」 「や、えっとですからわかめ酒事件の時に、オークションで勝ち取った報告をし忘れて、権利書発行とか、申請許可書とか手続きがまだ出して」 あっくんがしどろもどろになっている。これは、完全に報告を忘れていたな。 たった今まで、新婚旅行脳内計画だけしかなかった。 「俺は、人ごみとかあまり好きじゃない」 「問題ありません」 「それに、仕事も忙しいし」 「問題ないです」 「……なんで?」 恐る恐る尋ねると、あっくんは自信満々なドヤ顔で自分の胸を叩く。 「買いましたから。島を」 「……は?」 「無人島の権利書を、オークションで競り落としたんです」 この可愛い嫁は、何を言っているんだろう。 開いた口が塞がらない。 「人と接するのが苦手な和葉さんと、辰崎さんたちの監視がいらない二人の愛の巣。島の名前を一緒に考えてくれますよね。『フォーエバーエターナルラブ和葉』って名前で申請したら許可が下りなくて」 ……この愛しい嫁の、どこかを殴りたい。どこを殴ったら痛くないだろうか。

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