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第193話
「そんな、そんな、想像できないお金で島を買うなんて、本当に闇オークションとかしてそうだね」
「ちょ、和葉さん」
スケールが大きすぎて、驚いてしまった俺は脱衣所をそのまま飛び出す。
俺なんかのためにそこまで無駄使いしてほしくない。どう説明すればいいんだろう。
大きなため息とともに飛び出すと、廊下の隅で抱きしめ合いながら星を見ている二人組を見つけてしまった。
「君のように美しい夜空だよね」
「恐縮です」
「……テニスの後だから君の匂いが強く感じられて素敵だよ」
「私もです。立川市長」
「今は下の名前で呼んで欲しいな」
「……」
初夜の次の日である俺たちよりラブラブオーラを放っている二人組に、じりじりと距離を保ちながら逃げ出そうとした。
すると抱きしめていた高給そうなスーツの男が此方を振り返った。
「ああ、あの方が昭親くんのパートナーかな」
「お可愛い方ですね」
ウエーブかかった髪に、眼尻の皺、鷲鼻で微笑みを浮かばせた顔は、イケメンだ。
俺がエロ小説の中で書く、権力のある艶やかな中年男性。
不覚にも、ちょっとときめいてしまった。
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