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第197話
「はい。到着しましたー。帰ってください。帰って帰って」
あっくんは二人を外へ促している。本当に帰らせたいらしい。
「辰崎さんが送ってくださりますので」
「また連絡するよ」
「今度、うちの家に遊びに来てください。温泉を四人で入りましょう」
「はーい。世間が落ち着いたらねー」
玄関から追い出すと、辰崎さんの車に乗り込んだ。
本当に一瞬しか関わらなかったけれど、とても濃い二人で――。
俺に大切なことを伝えに来たようにも思えた。
「……散歩」
「はい?」
「散歩、しよっか。やっぱ」
俺が手を出す。
するとあっくんの顔が、今にも泣きだしそうな破綻した笑顔になる。
「あっくんの価値観とか、生活水準の違いは、俺もこれから知っていかなきゃいけないし」
「そうですね。お互い、これからはルールをしっかり作りましょう。和葉さんに嫌われたくないし」
そうやって俺を優先してくれる。
あっくんの、その俺への気持ちが涙が出てきそうなほど嬉しい。
見返りなんて求めてない、ってただ俺に何かしたいって、いつも一生懸命なんだ。
「あっくん、俺」
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