215 / 268
第217話
Side:竜宮 昭親
俺の愛しい恋人。
俺の大切な和葉さん。
ああ――。
「駄目だ。家に帰りたい」
和葉さんの居ない大学なんて、ルーの乗っていないカレーみたいな味気ないものだ。
「お前、せっかくこの前家に行ったのになんでパートナー見せてくれねえんだよ」
「ああ。恵。俺、もう帰るわ」
「無視かい。まあ、いいんじゃね。次の講義、休講かもって」
恵が眼鏡をあげながら、ニヤニヤ携帯を見ている。
頭はいいんだけど、どうして立川市長と違って清潔感がないんだろう。
すると俺の携帯も鳴った。
携帯はマナーモードで唯一和葉さんのメッセージだけバイブにしているが、この一か月鳴ったこともなかったのに。
『校門にいます。終わったら来てね。携帯は死んだ』
携帯は死んだってなんだ? 今メール打ってるじゃないか。
というか、和葉さんが外に出るのか?
「悪い、恵。パートナーが迎えに来ているので、帰る」
ともだちにシェアしよう!