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第218話
「俺も一目見たい! 兄ちゃんが透き通るような色の白い美人だって言ってた!」
それは滅多に外に出ないから肌は白くてきれいだけど、恵に見せたくない。
和葉さんの美貌は見世物ではない。
「お前はさっさと講義室へ行け」
「なんだよ、いいじゃん、見せてよ」
「お前の目には、高級品の価値は分からないだろう」
「そんな」
「あ。あっくん」
恵を振り払っていたら、何故か廊下の向こう側からそれはそれは、鈴のなるような愛らしい和葉さんの声が――?
「校門で待っていたら、辰崎さんが学校側に何か言って、入らせてくれちゃった。携帯繋がらないからどうしようかなって思ってたんだ」
照れたように首を傾げて俺を見る和葉さんは、ストイックな大人の男性の姿をしていた。
いつもの剥ぎ取りやすいゆるい浴衣姿ではなく、前髪を後ろへワックスで流して、俺が買っていたイタリア製のスーツに身を包み、恥ずかしそうに手を振っている。
「あ……似合わないかな。髪は辰崎さんがしてくれたんだけどっ」
俺が目を逸らせないでいるのを、恥ずかしそうに見ている。
「……ごめん、来ちゃった」
はい、好き――。
もうだめ、その服もいつものエロさがないし、駄目。好きすぎる。
それが恥ずかしそうな困ったような姿も愛してる。
「凄い、素敵です。見惚れて、言葉が出なくて」
「あはは、またまた。……あっ」
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