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第220話

あの家に閉じ込めているのは、俺の意思のようで、ずっと申し訳なかった。 和葉さんのトラウマを思えば、あの屋敷から出てくる必要はない。 けど、あの家に閉じ込めて和葉さんの可能性を消してしまっているのも事実なようで胸が苦しかったんだ。 和葉さんが自分から世界を広げようとしてくれたなんて、今すぐ抱きしめて車の中で一つになりたいぐらいだ。 髪がセットされていて、うなじが見えるのもいただけない。 俺の理性を壊している。 「……あの、俺、どっか変じゃなかった? やっぱ学校って人が多くて視線がまだ怖かったんだけど」 「その視線は、和葉さんが美しいから見惚れてただけです。誰が見惚れてました? 座敷牢に閉じ込めてやる」 「あはは。そんなわけねーじゃん。やっぱスーツに着られてる感が半端ないからかなあ」 一頻り歩いて、誰も居なくなったところで、柔らかく笑った。 緊張していたんだ。それなのに外に出て、俺に会いに来てくれたんだ。 「和葉さんっ」 我慢できず抱きしめたら、小さく笑いが零れた。 「なんだよ。外で抱きしめられると恥ずかしいじゃん」 「そのスーツ、乱したい。めちゃくちゃにしたい。でも――好きだからできない」

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