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第223話

可愛い。 正直なのが、堪らない。 官能小説家なだけあって、セックスにも興味津々で積極的だし、知識だけあるから無自覚で言葉で攻めてくるし。 執筆中のぐたぐたな感じは可愛いし。 「……あのさ、あっくん」 「はい」 「今朝、プロット没って言われただろ? あれさ、なんか……初めて純愛を書いたんだ」 車の流れるスピードで見る景色に、夢中になりながらも和葉さんはこぼす様に言った。 こちらは振り向かない。 「気づいたら、純愛だった。いつも快楽の先で繋がってる、みたいな快楽堕ち? ご主人様と下僕みたいな、高校時代のあの女教師と警備員みたいなトラウマをエロで昇華してるいたいな、そんな感じだったのに、書けなくなったんだ」 ゆっくりと俺の方を見る。信号で止まった俺は、和葉さんの方から視線を離せない。 「あっくんとするセックスは、愛しか感じられないから、だから純愛が書きたくなったんだ。すげえ、心が満たされて温かくなる奴。……全部没だったけど」 花弁が散るような、寂しそうな笑顔だった。 「だからエロ復活させるように、縛ったり、オモチャ使ってみたり、外でやってみたり、しようね」

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