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第229話
大事そうに、右手で左手を覆って、嬉しそうにはにかんだ。
俺はその笑顔だけで、天に昇ってしまいそうなほど嬉しかった。
「和葉さん、俺にも」
「え、あ、うん」
恐る恐る俺の左手に指輪をはめてくれた。
これが二人を縛ることはなくていいけど、これからの人生の中でパートナーとして、傍らにいても大切だと思えるような、そんな存在になってくれたら嬉しい。
「あっくん、ありがとう」
「いいえ。気に入っていただけましたら、次に行きましょう」
「うん。……うん? 次?」
嬉しそうにしていた和葉さんが、目を点にする。
「竜宮家に伝わる、花嫁に渡す婚約指輪。こっちは女性サイズだったんで思い切ってデザインと宝石の加工をしたんです。宝石の加工は、有名なデザイナーに頼んでいるので」
「ひー」
「彼の洗礼された美しい曲線は、神が創ったような仕上がりです。3年の予約待ちの中、竜宮家のあの婚約指輪となれば、優先的に仕上げてくださるみたいです」
オーナーも彼のファンなので、羨ましそうに説明してくれる。
「男性がつけてもおかしくないデザインを依頼したんだ」
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