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第232話

「お前ってすごいな」 「でもそんな凄いパートナーが?」 にやりと笑うと、和葉さんの頬が染まる。 「そんなパートナーが、めっちゃ好き。俺の嫁、世界一。愛してる」 その一言。 俺は自分がしたことを、感謝してほしいわけでも賞賛してほしいわけでもない。 同性婚の世論を変えるために、辛いことや苦しいことを正面からぶつかって解決してきたのは立川市長たちだし。 俺はただ、ただただ、10年前、夕日の中消えてしまいそうな美しい少年を愛してしまっただけだ。 その愛した人が、隣で俺の傍に居てくれる。 好きだと、気持ちを返してくれる。 何も、褒美も賞賛も労わりもいらないよ。欲しいのは、貴方のその一言だけ。 信号で車が止まる。 俺は真っ赤な和葉さんを覗き込むように近づいて、キスをした。 触れてもいい。この距離にいる。 それだけで俺は、滅茶苦茶に幸せだ。 労わらないで。 滅茶苦茶に愛して。

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