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第233話
Side:竜宮和葉
婚約指輪を受け取った。ベルベットの箱を開けたら、きらきら輝く宝石があって、驚いて閉じてしまった。
けれど彼は寛大に笑って、『婚約指輪は、べつにつけなくても構いませんよ』と笑った。
気づいていないのか、気づいてるのか分からないが、竜宮家が代々受け継いできた婚約指輪を、俺の代で止めてしまうんだぞ。
ただ好きになった人が同性で、だから同性婚を認めさせて――。
簡単に言ってしまうけど、簡単な言葉ではないと俺は知っている。
そんな簡単な言葉で言えることではない。
「和葉さん、海に寄っていきましょう」
「おま、俺は高級スーツだから、汚せないぞ」
「全然問題ありません」
有無も言わさずに車は、フェンスで塞がれたセキュリティセンサー付きのドアを開け、誰もいない海へと向かう。
「もしやここは」
「竜宮家のプライべードビーチです。少し向こうに、専用の港があるんです。海運王ですから」
もはや言葉が出ない。
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