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第239話
俺の無言の圧力に、あっくんの顔が強張る。
「……お、お小遣いの範囲内です」
「嘘つくなよ! 嘘ついたら、新婚旅行に行かないからな」
「嘘です。少し父の仕事を手伝っていただいた給料からです」
話を聞くと、ある品物を海外から輸入する会議であっくんの案が採用されて、それが日本に上陸して大ヒットしたとかしないとか。
あっくん、仕事もできるなんて隙がないよな。
「新婚旅行、楽しみすぎてカレンダーに毎日×書いてます」
「……あと二か月はあるのに、先が長いぞ」
「そうですよねえ。和葉さんの小説が脱稿したら、日帰りで行っちゃいます?」
「行かないけど」
「行きましょうよ!」
話しが長くなりそうなので、湯船に逃げた。
それをあっくんが飛び込む。
最近、行儀が悪いけど風呂で泳いでしまうんだよね。
そのうち、庭に温水プールとか付けそうで怖い。
「そういえば、和葉さんのぴらぴらパンツ、警察に届けます? 監視カメラ増やしてみます?」
「この蟻の侵入さえも許さない鉄壁のセキュリティ内に誰かが忍び込んで、俺の安いパンツなんか盗むわけないだろ」
「俺なら、怪盗昭親になってでも使用済みパンツ欲しいです」
「でもあっくんが犯人じゃないからなあ」
回答が得られるわけでもない言葉の応酬に、その話は止めた。
代わりに、風呂上りに辰崎さんにある話を言われて驚愕したのだが――。
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