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第248話
飛び起きて、あっくんを押しのけると枕元の電気をつけた。
そしてひらめいたとき用のメモ帳に書き殴る。『人妻』『宅配業者』『縛りたくなる身体』
「ちょ、あっくん」
後ろから抱きしめてくるあっくんが、耳を舐めてくる。
「猫って、こんなふうに言葉が通じないんです」
「……邪魔しないでまっておいて」
と言っているのに、服を脱がされ蚊帳の外に放り投げられた。
「もー……いたずらっ子なんだから」
メモ帳を投げ捨てると、再び布団に二人で沈んでいく。
どちらからも仕掛けて、熱くなっていく吐息、絡まる指先、舌が火傷しそうなほど熱い。
「猫じゃできないこと、していいよ」
小さく息を飲んだあっくんが、猫の振りをやめた。
そしてむくむくと大きくなって狼に変身して、俺を見下ろしている。
「ふふ。にゃん」
30歳の、その言葉がきついのではないか。
そんな後悔よりも早く、あっくんの理性が切れたのは、――言うまでもない。
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