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第259話

「ほわっちょ」 ほわっちょ? いいえ、混乱したあっくんが発した奇声です。 辰崎さんは、なにか紙を持って青ざめていたが、俺とあっくんの風貌を見るや否や、一瞬豆鉄砲をくらった鳩のような顔になる。 「すいま……いえ、申し訳ございません。取り乱して、お二人のお楽しみ中に」 「は、ハッピバースデーとぅーゆー! いえー!」 急いで持っていたろうそくを、あっくんが買ってきたケーキに突き刺した。 「あっくん、ケーキ食べたいってご飯前にわがまま言ってたから、めっだぞ。もう待て、だからね」 「待つ。待つから、手錠外して」 「おう。じゃあ三人そろったし、俺たちの結婚半年おめでとうバースデーを歌おう」 「いえーい」 俺とあっくんは、馬鹿みたいなテンションで誕生日ソングを熱唱し、三人でハイタッチし、SMプレイ用のろうそくを吹き消した。 何をやってるのか自分たちでもわからないけど、力業で乗り切って、そして竜崎さんの方を見た。 「で、どうしたんですか?」 「突然、申し訳ありません。家内と娘が……猫アレルギーでした。診断書を見せられてしまい、せっかく猫を引き取ろうと思っていたのですが……引き取れなくなってしまいました」 「そんな……辰崎さん、あんなに楽しみにしていたのにっ」

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