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第260話
うちに住み着いた四匹の猫と親猫を、辰崎さんが引き取りたいと言っていたので、彼が毎日世話を進んでしていたのを知っていたし、喜んで引き渡す予定だった。
でも辰崎さんは申し訳なさそうに、土下座しそうな勢いだ。
「ですが……新婚のお二人の家に、入り浸るわけにもいかず」
「それは確かに困る!」
「あっくん!」
こら! と背中を叩くと、なぜかちょっと嬉しそうだった。
まあ、でも猫に会いたいならしかたないんじゃないかな。
「分かりました。テニスコートの隣に離れを作ります」
「あっくん?」
「猫の家です。そうすれば、屋敷でイチャイチャしてる俺たちを邪魔しなくてすむし、辰崎さんも気兼ねなく入り浸てるし」
「お二人にろうそくを吹き消して誤魔化すような遠慮をさせることもないですね」
ろうそくの件は、一回、外に蹴り飛ばして忘れてくれ。
本当、夜中に発狂してしまうぐらい恥ずかしいから忘れてほしい。
でも別に離れなんて作らなくても、普通に家に入ってくればいいのに。
こんなイケメンな老執事なんて、毎日見ていても眼福だし。
「あの……家の真ん中にキャットタワーを作ってあげれますか」
「いいよ。それぐらい。一階建ての方が猫に安心かな」
「もちろんでございます」
辰崎さんも乗り気、か。
「あっでも工事とかしたら、人が苦手な和葉さんが大工と会ってしまうのか」
「問題ないよ!」
ガチムチな筋肉の働く人は、大好物だ!
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