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2.そういう意味で一緒にいたなんて聞いてない

 それからも雷は容赦なく鳴り続けた。  その間に友人である勝哉は濡れた服を脱ぎ、すばやく全身を拭うと呆気にとられる悠を抱きしめ一緒に布団の中に潜った。さすがにズボンは履いている。エアコンの効いた室内、裸でいれば風邪を引くかもしれないが布団の中で身を寄せ合っているとさすがに汗ばんでくる。 「……おい、暑いよ……」 「まだだめ」  勝哉に抱きしめられて悠は気づいた。勝哉とは5cmぐらいしか背が変わらなかったが(勝哉の方が高い)、その体格は悠よりはるかにがっしりしていることを。なんだか自分が小さく、守られている存在のように感じられて悠は恥ずかしくなった。それなのに勝哉は更にきつく悠を抱きしめ、頭を優しく撫でたりする。  ガラガラガラガシャーン!! 「ひぃっ……!」 「大丈夫、俺がいる」  互いの息づかいと、勝哉の汗と雨の匂いを感じ、悠はなんだか落ち着かなくなった。それでも雷の音に対しては少しばかり冷静になれた。それは勝哉のおかげに違いなかったが、抱きしめられている人肌のぬくもりのせいなのか、ただ勝哉がここにいるせいなのかは悠にもわからなかった。  ゴロゴロゴロ…… 「いつまで続くんだよ……」 「遠ざかってる。俺が守るから寝てていいよ」 「……な、何言ってるんだっ!?」  さらりと女の子に対して言うような科白を言われ、悠は勝哉の胸から顔を上げた。 「きーちゃんは俺が守るって決めてるから」 「……え……」  いつもどこを見ているかわからないような友人だったけど、悠のことだけはその何を考えているのかわからないような目で見ていた。勝手に「きーちゃん」なんてあだ名をつけて、高校の時から川上智という友人と共にいつも一緒にいた。 「……なぁ、もう俺ら男子校にいるわけじゃないんだぞ? それとも、智たちに影響……」 「影響なんかされてない。きーちゃんに会った時からきーちゃんを守るって俺が決めてるだけ」  悠が通っていた全寮制の私立慧陵学園は現在通っている慧陵大学の付属校だった。慧陵学園は男子校で山の中にあったことから男同士で擬似恋愛をする者も少なくなかった。悠たちの友人である智は卒業間際にルームメイトとくっつき、現在大学は違うがラブラブな恋人同士である。だから悠は勝哉が彼らに影響されたのではないかと思ったのだった。  なのにそうではないという。 「会った時って……」 「高校の入学式。桜の花びらの中で倒れてた」 「……うわっ、なんてもの覚えてるんだよ?」  慧陵学園は中等部からあるが悠たちは高等部から入った。入学式の当日はもう桜があらかた散っており、桜の花びらの吹き溜まりができている場所があった。悠はなんだかそこに寝転がりたくなってしまったのだ。一応周りに人がいないことは確認したつもりだったが、何人かには見られていたらしい。  勝哉に声をかけられたことも覚えている。 「きーちゃんを桜に取られたくないって思った」 「……桜の方にお断りされるから大丈夫だ」  ゴロゴロゴロ…… 「うああああ!」 「やっぱ一緒に住もうよ。雷鳴ってる時もこうやって抱きしめるから」 「抱きしめなくていい!」 「きーちゃんつれない」 「いつからなんだいつからそんな風に俺は見られてたんだ?」  布団の中で相手の顔はよく見えなかったが、勝哉が笑ったように感じた。 「……知りたい?」  雷より勝哉の言動に悠は泣きそうだった。

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