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不審者 #2

「あのう…どうかされましたか?」 意を決して男性に声を掛けた。しかし、男性は何も答えない。更に顔を赤面させるだけ。 「大丈夫ですか?」 もう一度声を掛けると、男性はやっと口を開いた。 「あっ、いや…実は腹が減っているのだが、こんな時間でも何か売っているのかと…」 「コンビニですから、何かしらはありますよ。時間も時間ですから、ご希望に添えるものはないかもしれないけれど。」 「そうなのか!」 男性の表情がばっと明るくなった。 「どうぞお入りください。」 店内へと促すと、男性は二、三歩進んでまた立ち止まった。 「どうしました?」 「随分とラフな装いで来てしまったのだが…」 何を勘違いしているのか、どうやらドレスコードが気になるらしい。彼の装いを確認すれば、ジャケット、シャツ、パンツ。ジャケットのポケットにはチーフまで入っている。むしろ、どこぞのフレンチにも充分入れる装いだ。 「あの…コンビニですよ?」 「知っている。」 「コンビニにドレスコードなんてありませんよ。裸や下着、水着、それに近い格好でなければ大丈夫です。その装いなら充分過ぎるぐらいですよ。」 「そうなのか!」 心底安心したように、一つため息をついて、店内に入った。しかし、それも束の間、男性はまた歩みを止めた。 「今度は何です?」 「いや、たくさん物があり過ぎて…どこから見たら良いのか…」 「お腹がすいているんですよね?お弁当やおにぎりなんかから見てはどうでしょう?」 「なるほど!便利な店だな。」 「コンビニですからね。」 「コンビニという店は全部こんな感じなのか?」 「まぁ、それぞれの企業で個性はあるにしても、全体的にはこんな感じてすね。あの…お酒召されてます?」 「いや。」 「じゃあ…からかってます?僕のこと。」 「何故そう思う?」 「いやぁ…今どきの小学生でも知っていることを問われたので…」 「仕方ないだろう?こういう店に入るのは初めてなのだから。」 「えっ?コンビニですよ?」 「そうだ。」 「はぁ…」 「バカにするのか?」 男性が少し声を荒げたところで、キュルキュルルと空腹を知らせる音が鳴った。男性はまた赤面する。 「まずはお腹を満たしましょう。僕がご案内します。さっ、どうぞ。」 再び促すと、男性は小さく 「すまない。」 と呟いた。

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