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Magie #2

頬から唇を離すと、残念ながら魔法は解けていることはなく、達彦さんは更に固まっていた。 「あの…達彦さん?」 「あっ、なっ、ちっ、千秋君!」 「はい。」 「いっ、今のは?」 「今の?」 「今の…そっ、そのくっ、口づけ…」 「いけませんか?」 「いや、いっ、いけなくは…ないのだが…」 「だったら良いじゃないですか?減るもんじゃないですし、誰が見てるワケでもないですし。」 「いや、しかし…」 「理由が必要ですか?」 「出来れば。」 「そうですね…色々ありますけど…ひとまずは、『泊めてくださってありがとうございます』かな。」 僕の言葉が腑に落ちたのか、達彦さんはそこから急に動き出した。 「ああ、なるほど。そうか。では、早く上がって、風呂に入りたまえ。その服、洗濯せねばならぬだろう?」 「ありがとうございます。」 「ああ、タオルや歯ブラシもいるな。歯ブラシのストックの場所は分かるのだが、新しいタオルはどこだったか…」 「お嫌でなければ、達彦さんがお使いの物を貸してください。ああ、今日洗濯したものがありましたね。あの中の一枚、貸して頂けませんか?」 「それは一向に構わないのだか…良いのか?おじさんの使い古しだぞ?」 「おじさんのではありません。達彦さんのです。」 「う〜ん…まっ、君が良いなら良いだろう。さっ、早く上がりなさい。」 「はい。お邪魔します。あっ、千春さんにまたご挨拶しなくっちゃですね。今日お泊りさせて頂きますって。」 再び香月家に上がると、達彦さんは顎に手を置き、何か考え込んだ。 「あれ?何か失礼なこといいました?僕…」 「あっ、いや、そんなことはないよ。早速、風呂の準備をしなくては…」 「僕がします。その代わり、達彦さんはお仕事して下さい。今日中に目を通さないといけない資料があったのでしょう?」 「ああ。」 「さっ、お仕事、お仕事。後でお茶お持ちしますね。一応、デカフェの茶葉買っておいたんです。役に立って良かった。」 達彦さんの背中をポンポンと軽く叩き、見送る。達彦さんは何度か振り返り、僕を見ては顎に手を置き、何か考えていた。その度に僕は彼に手を振る。徐々に小さくなるその背中を見て、僕はやっと気が付く。 どうやら僕は…この人が好きらしい。 男の人だけど。

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