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第11話

『声が出ないんだ 質問とか答えれなくてごめんね…』 書かれた文字を何度も読み直した 半信半疑だったから でも何度読み直しても 書いてあることが変わるわけなくて 「ほんと…なんですか…」 我ながら失礼だとは思う 本人が言っているのだし信じるべきだ だけど、そう簡単に信じれない 先輩はゆっくり紙にペンを滑らせ 『ほんとだよ。生まれつきではないけど』 そう言って悲しそうに笑った 僕は先輩を傷つけた 無言やめて下さい 喋って下さい 先輩にとって残酷なことを言った 「ごめんなさい…喋って下さいとか ひどいことを言って本当にごめんなさい」 頭を目一杯下げた これで許してもらえるなんて思わないけど 『大丈夫だよ謝らなくても 知らなかったんだし』 「でも…先輩を傷つけた…」 涙が頬を伝った 僕だったら絶対嫌だもん なんでか涙が止まらない 『泣かないで 抱きしめたくなるから…』 「えっ…?」 驚いた僕の頭を 先輩は優しく撫でた それはすごく心地よくて すごく安心した 「ありがとう…ございます…」 『いいえ 俺も勝手に抱きしめてごめんね…』 「大丈夫です、ちょっとびっくりしたけど 不思議と嫌じゃ…なかったから」 普段なら絶対不快感を覚えるのに 先輩に抱きしめられたとき、驚いたけど 不思議なことに不快感はなかった 自分でもびっくりしている 『そっか… HRごめん…俺のせいで出れなくて…』 あっ、確かにもう終わる頃だ まぁ先生の長い話を聞くよりはましだ 「先生の長話なんて聞きたくないし 別に大丈夫ですよ」 『ならよかった じゃ教室戻ろっか』 「戻らないとですね、先輩は?」 『俺は…』 先輩は俯いたまま固まった なんかまずいこと聞いたかも… 「色々事情とかありますもんね じゃぁ、僕いきますね」 これ以上聞くことはできないし とりあえず僕は保健室を出た 先輩が何かを言いたそうにしていたのは …うん 気づかなかったことにしよう

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