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ひよこ
「えっ、もしかしてちゃうかった?」
今度は首を傾けたのがかわいくて、ギャップにやられる。
「いや……合ってます。はじめまして、福岡サガさん」
僕はオドオドしながら言って、ぎごちない笑みを浮かべる。
「はじめましてぇ……昨日ぶりやんなぁ。今日よろしくね」
サガはさっきとは違うふわりとした微笑みを返してくれた。
「ホストってスーツのイメージだったんだけど、私服なん……だ」
僕の純粋なイメージを伝えると、最初は頭の上に?マークを浮かべてたものの、すぐに弾ける笑みを見せた。
「ああ、間違ってはないよぉ……でも、気楽な方がええんかなって」
サガはんふふと笑いながら、後ろに手を回してフードを被る。
そこには真顔のひよこの顔が書いてあり、それによってサガがこの服を着てきた意味がわかって思わずニヤッと笑った。
「あっ、やっとわかったんやろぉ。福岡といえばとんこつ、とんこつといえばラーメン、ラーメンといえば……やんなぁ?」
笑顔で僕を見つめてくるサガに鼻血が出そうだ。
「後は、隣で歩いても僕の方が彼女に見えるかなぁ……なんて」
サガは僕の手を取って、勢い良く歩き出す。
いきなり過ぎて転けそうになったのとその手慣れた感じが悔しくて、僕は少し意地悪なことを言う。
「僕より背が高くて、声が低い彼女なんているかよ」
すると、予想もしないくらいの高笑いが聞こえた。
「そ、そうかぁ……それも、そう、やんなぁ……アッハッハ」
横顔は逆光でよく見えなかったけど、一番楽しそうな笑い声は僕の耳と心にすごく響いたんだ。
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