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ドアドンキス
アパートの前まで来た頃には手繋ぎから人差し指を絡ませるくらいになった僕ら。
片手が塞がった状態でなんとかカギを開けて、サガを先に入れた……のはいいんだけど。
なぜドアに身体を押し付けられて唇を塞がれているのだろうか。
いきなり過ぎて目は開けたまま、サガの唇の柔らかさだけしかわからずにフリーズする。
向きを変えることも
何かを口の中へ押し込むこともなく
ただ僕の唇に温もりを与えるだけのキス。
そのキスの目的も意味も
僕にはわからなかった。
切ない流し目をしながら僕の唇から離れ、安心したように微笑みを浮かべて僕の頭を撫でるサガ。
「今、魔法をかけた……これからは夢の時間やから思いっきり楽しもうなぁ」
端正な身のこなしと澱みない瞳で言われたら、うなずくしかなかった。
「よし、じゃあ夕飯作ろうっとぉ……お邪魔しま〜す」
サガは上機嫌の様子で靴を脱いで、居間に入っていく。
「僕のファーストキス……奪われた」
唇を人差し指で撫で、その指を眺めて余韻に浸る。
優しくて
温かくて
くすぐったいキスだった。
「どうしたん? 大丈夫?」
心配する声がしたからハッとして、今行くって声を出し、急いで居間へと向かった。
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