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おぼっちゃま
「お邪魔でしゅいましぇん」
遠慮するように言いながら、居間まで来た彼は黒のベストの礼服に大きいシルバーのアタッシュケースを持っていた。
「まずは飲みながらお話しましょうよ……狭いですけど、座ってください」
「いや、あの……雑に扱ってくだしゃい。ぼくちん、犬猫以下でしゅから」
立ったまま、オドオドしてる彼は重めの茶色い前髪を揺らす。
「いいですから、お茶かビールか選んで座ってください……おにぎりは筋子しかないですけど」
「あの、ホントに……」
ガラスコップを準備してる間も、身体を震わせてただ立ってるから、ちょっと腹が立ってきた僕。
「いいから座れっての! 話が進まねぇなぁ!!」
思わず誰かに向けて荒げたことがない声を出す。
部屋中に響く静けさで、自分がしでかしたことに気が付いた。
「あっ、すいません……「ご主人様の命令なら、喜んで従いましゅ!」」
見たこともない左頬にエクボが出るくらいの笑みを浮かべてストンと座った彼。
まさか、と思いながら喉から低い声を出し、口調を変えてみる。
「おい、お茶かビールか選べ」
「お茶でいいでしゅ」
「筋子しかねぇけどいいな……このやろう」
「はいぃ! こんなぼくちんにくだしゃるのなら、土でもゴミでももらいましゅ」
満足そうに笑う黒縁メガネで口元にホクロがある彼のキャラは……ドMなのか。
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